図書館みたいな家

今までで一番本が多かったお宅は、「引っ越し時に本だけで段ボール300箱」だったという、お2人とも大学教授のご夫婦でした。「本でパンクしては引っ越し」を繰り返し、ついには「この本を収めるには賃貸では無理。注文住宅でなければ」と家づくりを決意されたとのお話。

さすが、と思ったのはそこから、「本が見渡せるような家にするには、耐震性が重要」と考え、工法から依頼先を選んだという点です。完成したお宅は図書館のように本棚が林立した書斎と、すっきりしたLDKがひとつながりの空間になり、さらにリビングは大きな吹き抜けになっていて、開放感と落ち着きが絶妙に同居していました。

もう1軒も大学教授のご夫婦で、中古リノベのお宅。このお二人はインテリアがとてもお好きで、中古物件もデザインというか佇まいで選ばれていました。ドーンと広くしたLDKに本棚をダーッと造り付けてあったのですが、その本棚も素材感を変えたり、本の合間に小物を飾ったり、その小物が辺りの本のテーマに関連があるなど、知的な中にも遊び心があって目にも楽しいお宅でした。

私自身、本が好きなせいもあって、「本棚のあるリビング」に惹かれます。古い一戸建てをリノベしたお宅も印象的でした。リビングに入ったらパッと目に入る造り付けの本棚。もとの和室の押し入れ部分を利用した、空間にすっぽりはまったような本棚で、背面をブルーグレーにペイントしてあり、前にソファが置いてあって、「ここで本を読んだら気持ちがいいだろうなあ」と思わせる空間でした。

2階のホールに本棚を設置して「家族のライブラリー」にしたり、吹き抜けに面した手すり部分を本棚にしたり、階段ホールの壁面にずーっと本棚を造り付け、上り下りしながら本を選べるというお宅もありました。そういえば「階段に腰掛けて本を読むのが好き」というお子さんが多くて、よくその光景を撮影させてもらいます。

ロフトに設けた漫画本の棚だとか、寝室に設けた寝る前に読む本の棚だとか、本棚にはその人らしさがあらわれて興味深い。背表紙を眺めてそのご家族の志向を推し量るのも取材時のひそかな楽しみです。

soho MUGCUP

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住宅ライターが綴る、家のこと、暮らしのこと、書くこと、仕事のこと。。。